ブルックナー交響曲第2・3・7番デニス・ラッセル・デイヴィス&リンツ・ブルックナー管弦楽団聖フローリアン大聖堂ライヴ!すでにブルックナーの交響曲全集を完成しているデニス・ラッセル・デイヴィスとリンツ・ブルックナー管弦楽団が、ブルックナーの聖地ともいわれる聖フローリアン大聖堂でおこなった交響曲第2番、第3番、第7番のコンサートの録音を新たにリリース。【交響曲第2番】美しい旋律に彩られた第2番にはすでに多くの名録音が存在し、デニス・ラッセル・デイヴィスの旧録音も、克明なリズムが旋律の歌わせ方のうまさを引き立たせた見事な演奏でした。今回は楽譜が異なり、さらに録音会場の音響的な性格も大きく異なります。今回、用いられた楽譜は、オットー・デッソフ指揮ウィーン・フィルによって試演された、作曲者の原意が最も強く反映された初稿で、ウィリアム・キャラガンが校訂した楽譜を用いています。この初稿はやがて、デッソフの「長すぎる」という発言と、ヨハン・ヘルベックの「聴衆に合わせるべき」という助言を受けて、スケルツォの反復省略、終楽章56小節短縮、一部差し替えという形で正式に初演され(第1稿初演版:アイヒホルン)、その後、大規模なカットや差し替え、休符の削除といったさまざまな改訂やミックスを経て、現在一般的な第2稿ハース版(朝比奈、バレンボイム&CSO、シャイー、エッシェンバッハ、ハイティンク、インバル、コンヴィチュニー、マズア、スクロヴァチェフスキ、シュタイン、ヴァント、ツェンダー)や、第2稿ノヴァーク版(ジュリーニ、カラヤン、ヨッフム、デニス・ラッセル・デイヴィス、ロジェストヴェンスキー、ショルティ、若杉)、第2稿キャラガン版(バレンボイム&BPO)という形に姿を変えてゆきます。つまりブルックナーの第2交響曲で最も情報量が多く、かつまた「パウゼ交響曲」ともあだ名されたパウゼ(休止)の効果がよくあらわれているのがこのヴァージョンということになります。ちなみにこの初稿の校訂を、レオポルト・ノヴァークがウィリアム・キャラガンに依頼したのが1987年の話で、1990年には簡易な形で出版され、アイヒホルンとティントナーがさっそく録音、2005年になって正式ヴァージョンが出版されると、シモーネ・ヤング、マルクス・ボッシュ、ゲルト・シャラー、ヘルベルト・ブロムシュテット、アイヴァー・ボルトンと次々に録音されるという人気ぶりで、そこに今回のデニス・ラッセル・デイヴィス盤が加わることとなります。なお、演奏時間は第2稿ノヴァーク版を用いた旧録音が58分39秒だったのに対し、今回は71分28秒と巨大化しています。【交響曲第3番】第3番の初稿は、作品の渾名『ワーグナー』の根拠ともなったワーグナー作品の引用を含むヴァージョンということもあってか1980年代初頭から演奏され、広く知られるようになっています。第1楽章は第2稿、第3稿に較べて初稿は100小節近く長く、ワーグナーからの明確な引用が含まれているのが特徴。『ワルキューレ』の“眠りの動機”が最も目立つもので、この音楽のあとに冒頭部分が再現される箇所にはなんとも言えない魅力があります。第2楽章も第1楽章同様、初稿では、ワーグナーからの引用が削除されずに残っているため、はじめて聴くとけっこう驚かされる部分があります。具体的には、第1主題変奏ブロックに《タンホイザー》序曲の巡礼主題のイメージが投影されているという部分と、コーダに、第1楽章と同じワルキューレの動機が用いられている部分の2箇所ということになります。また、第2稿、第3稿との大きな違いでもある構成上の相違点、つまり、ベートーヴェンの第9にならったと思われる並列的な変奏スタイルもブルックナー好きにはたまらないところで、第1主題の美しい変奏がたっぷり聴けるのはやはり快感です。 第3楽章スケルツォでの初稿の大きな特徴である主部主題の構成単位の不規則性は、後の版では規則的なものに改められ、流れが良くなるぶん、野卑なまでの荒々しさという要素が減退しており、トリオののどかなレントラーとの対比効果も弱まっているように思えます。第4楽章は、初稿とほかの稿との差異が特に目立つ楽章。ソナタ形式の構造概念に比較的忠実な初稿は、3つのヴァージョンの中で最も規模が大きく、主題の再現や回想などもきちんとおこなわれ、なおかつ休止が頻繁なために、独特の激しく闘争的な雰囲気が漂うのが特徴。未整理な混乱という見方もありますが、ベートーヴェンの第9よろしく、素材回顧を入念におこないながら、古典的な様式セオリーに取り組む姿には魅力があります。演奏時間は第3稿ノヴァーク版Disc11 : Bruckner: Symphony No. 2 WAB102 1. Fassung 1872: I. Allegro. Ziemlich schnell [19:49]2 : II. Scherzo. Schnell [12:57]3 : III. Adagio. Feierlich, etwas bewegt [17:30]4 : IV. Finale. Mehr schnell [21:12]Disc21 : Symphony No. 3 WAB103 1. Fassung 1873: I. Gemasigt, misterioso [27:59]2 : II. Adagio. Feierlich [22:16]3 : III. Scherzo. Ziemlich schnell [07:43]4 : IV. Finale. Allegro [21:49]Disc31 : Symphony No. 7 WAB107 1883: I. Allegro moderato [22:46]2 : II. Adagio. Sehr feierlich und sehr langsam [22:13]3 : III. Scherzo. Sehr schnell [11:28]4 : IV. Finale. Bewegt, doch nicht schnell [12:42]Powered by HMV