ヴィオラの音を満喫ショスタコーヴィチ、ストラヴィンスキー、グラズノフ作品集デュオ・フォネ(レオナルド・ターイオ、ソフィア・アディノルフィ)ロシア帝国に生まれた作曲家の作品を集めたヴィオラ・アルバムで、ショスタコーヴィチのヴィオラ・ソナタと、「馬あぶ」抜粋、ストラヴィンスキーの「イタリア組曲」、グラズノフのエレジーを収録。 一般的な意味でのロシア的な作品はグラズノフのエレジーのみ。ショスタコーヴィチのヴィオラ・ソナタは自作やベートーヴェン、ベルク、チャイコフスキーなど多くの引用を含む謎めいた曲調で、「馬あぶ」はイタリアの革命話の映画音楽、ストラヴィンスキーのイタリア組曲はイタリア音楽の編曲という具合で、変化に富む内容となっています。 演奏はイタリアの若手「デュオ・フォネ」によるもので、「馬あぶ」冒頭の「情景」から実に表情が豊かで重音部分も見事。録音も優秀です。 ブックレット(英語&イタリア語・12ページ)には、演奏のレオナルド・ターイオによる解説が掲載。Brilliant Classics ・ Piano Classics ・ Berlin Classics ・ Neue Meister 作品情報「馬あぶ」 Op.97より5つの小品トラック1から5は、観客動員数3,916万人の大ヒット映画「馬あぶ」(1955)のためにショスタコーヴィチの書いた音楽から5曲を選んで編曲演奏したものです。原作はソ連でロングセラーとなっていた革命小説で、1928年と1980年にもソ連で映画化されています。 タイトルの「馬あぶ」は吸血性の大型アブのことで学名でいえばタバヌス属。日本の「ウシアブ」もタバヌス属で近似種です。 その「馬あぶ」が吸血する際の痛みは、馬の眠りを妨げる原因にもなります。法廷で裁かれるソクラテスが、アテネの人々を馬に譬え、自身について、彼らを目覚めさせるアブであると弁明していたとプラトンは記しており、ほどなくソクラテスが処刑されてもいることから、原作者は主人公の革命家のあだ名を「馬あぶ」としたのかもしれません。 原作者のイギリス人女性作家、エセル・リリアン・ヴォイニチ(1864-1960。1902年までブール姓)は、アイルランドに赴任していた数学者の父と母の間に生まれますが、生後間もなく父が亡くなったため母たちとイギリスに転居。幼いころからピアノを弾いていたエセルは18歳から21歳までベルリンで音楽を学んだのち、イギリスに戻ってロシア語を学び、23歳から25歳まで家庭教師としてサンクトペテルブルクに滞在。イギリスに帰国後、帝政に反対するロシア人たちの発行する英語機関誌「自由ロシア」の編集に携わり、エリノア・マルクス、オスカー・ワイルド、バーナード・ショー、フリードリヒ・エンゲルス、ウィリアム・モリスらと交流。 やがてシベリアの収容所から脱出したポーランド人革命家ウィルフリッド・ヴォイニチと出会って同棲、その後、1895年には、諜報員として有名になるシドニー・ライリー(1873-1925)とも交際。そして1897年にアメリカで出版したのが長編小説「馬あぶ」で、ロシアでは1898年に出版されて以来人気を博し、映画公開の1955年には、ソ連作家同盟とソ連文化省の提案により、ニューヨーク在住のエセル・ヴォイニチに謝礼金15,000ドル(約2,500万円相当)を支払うことをフルシチョフが承認しています。ストラヴィンスキー:イタリア組曲グラズノフ:エレジーショスタコーヴィチ:ヴィオラ・ソナタPowered by HMV