熱き共感とともに魅力を描き尽くした会心作ゲルギエフ&ロンドン響による『ロメオとジュリエット』全曲レーベル・スタートより10年目となる2010年に向けての「LSO Live」最新アルバムは、首席指揮者ゲルギエフによるプロコフィエフの『ロメオとジュリエット』。2008年秋に手兵LSOを率いた形としては初の来日公演を果たし、交響曲全曲と主要な協奏曲を含む「プロコフィエフ・チクルス」で大成功を収めたゲルギエフが、その直前に本拠バービカンでおこなったコンサートを収録したものです。 「私はこの30年来、プロコフィエフのすべてのオペラを指揮して来ましたし、ほとんどすべてのバレエや映画音楽も指揮しています。彼のすべての作品を知っています。でも、まだ興味が尽きることはありません。」 自身の言葉を裏付けるように、プロコフィエフをライフワークに位置付けるゲルギエフは、これまでに1988年以来の手兵マリインスキー劇場管と『3つのオレンジへの恋』、『炎の天使』、『修道院での婚約』、『戦争と平和』といった主要なオペラとピアノ協奏曲全曲のレコーディングをおこない、LSOとは首席指揮者就任以前の2004年に交響曲全集シリーズを敢行、この模様を収めたライヴ録音盤はGramophone賞を獲得しています。 「プロコフィエフの音楽はドラマチックなパワーを強くもっていて、特にバレエやオペラでそれを強く感じます。交響曲も彼の作曲人生の中で重要なジャンルですが、何と言っても本領は劇場のための作品にあります。プロコフィエフとは『ロメオとジュリエット』を書いた作曲家である、とさえ言えるでしょう。」 シンポジウムで、プロコフィエフの『ロメオとジュリエット』についてこのように熱く語り、来日公演でも第1、第2組曲より計10曲を取り上げていたゲルギエフですが、どうしてもこだわりのあるレパートリーということもあるのでしょう。このたびのLSOとの新録音でも、前回1990年のマリインスキー劇場管との録音と同じく、52曲からなる完全全曲。 これほどまでにゲルギエフが絶賛する『ロメオとジュリエット』は、パリから祖国に戻り、たまたま接したシェイクスピアの悲劇にいたく感動したプロコフィエフが、原作のバレエ化により実験主義的、モダニズム的手法から、シンプルで自然な手法、ロマンシティズムヘの転換点とするべく自らに課して創作に臨みわずか4ヶ月で一気に完成させた作品。彼の書いたバレエ・スコアのなかでももっとも長大で、もっとも激烈かつ劇的な作品である事実からも、プロコフィエフの強い意気込みがうかがい知れます。それだけに、ゲルギエフが作曲者の当初意図した完全な形での録音にこだわりをみせるのは当然のことなのかもしれません。 ところで、LSOにとっても『ロメオとジュリエット』はなじみの作品といえ、1973年にプレヴィンが全曲版をセッション録音しているのをはじめ、1966年にアバドがハイライトをセッション録音、1978年にチェリビダッケ指揮のハイライトをBBCがライヴ収録、1983年にチェクナヴォリアンが組曲版をセッション録音(未発売)、1985年にヤン・パスカル・トルトゥリエが6曲をセッション録音という具合に、ここに至るまでの録音数も少なくありません。 来日公演では、重厚なオスティナートで名高い第13曲『騎士たちの踊り(モンタギュー家とキャピュレット家)』や、荒々しい躍動感が横溢する第35曲『タイボルトの死』といったナンバーの扱いが、広大に取られたダイナミックレンジと情報量の多さとにおいて圧巻というほかないものでした。ただ、それにもまして強い印象を残したのが、たとえば、チャーミングで愛おしい第10曲『少女ジュリエット』や、また、来日時の実演でもやはり終曲に置かれていた第52曲、悲痛なまでの愛の昂ぶりが胸に迫る『ジュリエットの墓の前のロメオ』でみせた、美しく優しく繊細なメロディの表現。じっさい、ゲルギエフは「美しいメロディが重要なポイントであるプロコフィエフ作品の中にあって、もっとも美しいものが『ロメオとジュリエット』と思っている」とも述べています。 「ゲルギエフとLSO のパフォーマンスはまったくすばらしかった。ただのありきたりのオーケストラの演奏水準とかではなく、ゲルギエフが、手兵から引き出した色彩ときめ細やかさの幅において、それはバレエの振付が無いことをほとんど問題としないものでした。」(クラシカル・ソース・ドットコム) 来日公演とほぼ同じ時期に録音された当アルバムですが、プロコフィエフを知り尽くし、『ロメオとジュリエット』をPowered by HMV